- 在留資格ってそもそも何なのか分からない
- どの種類を選べば良いか迷っている
- 申請方法や手順が複雑で不安を感じている
日本で外国人が生活したり、働いたりするためには「在留資格」が不可欠です。
しかし、「在留資格とビザは何が違うの?」「どんな種類があって、どうやって取得するの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、在留資格の基本的な知識から、ビザとの違い、全29種類の在留資格、そして具体的な申請方法までを網羅的に解説します。
外国人材の雇用を検討している場合や、日本での生活を考えている外国人の方は、ぜひ参考にしてください。
在留資格とは
在留資格とは、外国人が合法的に日本に滞在し、活動を行うために必要な法的な資格のことです。
「出入国管理及び難民認定法」(入管法)に基づき、資格の種類によって、日本での活動内容や身分が定められています。
例えば、エンジニアとして日本企業で働く場合は「技術・人文知識・国際業務」、日本の大学で学ぶ場合は「留学」といったように、日本で行う活動に合わせた在留資格を取得しなければなりません。
資格で決められた以外の活動を行ったり、在留期間を超えて滞在すると不法滞在となり、罰則を受けるほか在留資格を取り消される恐れもあります。
在留資格は活動内容ごとに29種類に分類されています。(2025年4月現在)
在留資格を正しく理解することは、外国人材を安心して受け入れるための最初のステップです。
在留資格の確認方法
外国人の在留資格は、主に在留カードで確認できます。
在留カードは、日本に3ヶ月を超えて滞在する外国人(中長期在留者)に対して交付される身分証明書です。
在留カードの表面には、氏名、顔写真、国籍、在留資格の種類、在留期間の満了日、就労の可否などが記載されています。
企業が外国人を雇用する際には、就労が認められている在留資格を持っているか、在留期間が有効かなどを必ず確認する必要があります。
在留資格の確認を怠ると、不法就労を助長したとみなされ、企業側も処罰の対象になるリスクがあるため注意しましょう。
なお、3ヶ月以下の滞在者や「短期滞在」の在留資格を持つ人には在留カードは交付されず、パスポートに貼られた証印(シール)で確認します。
ビザとの違い
在留資格とビザ(査証)は混同されがちですが、法的には異なるものです。
- ビザ(査証):外国にある日本の大使館や領事館が発給するもので、「この人物のパスポートは有効であり、日本への入国に支障がない」という推奨のような役割を果たします。
ビザは、あくまで日本に入国するための審査を受けるためのものであり、日本での滞在を許可するものではありません。 - 在留資格:日本の空港などで行われる上陸審査を経て、日本への入国が許可された際に与えられる滞在許可です。
この在留資格に基づいて、外国人は日本に滞在し、活動することができます。
ビザは「入国のための推薦状」、在留資格は「日本に滞在し活動するための許可」と理解するとよいでしょう。
在留資格の種類
在留資格は、日本で行うことができる活動内容によって、大きく3つのカテゴリーに分類することができます。
就労可能な在留資格
定められた範囲内で就労が認められている在留資格で、一般的に「就労ビザ」とも呼ばれます。
全部で19種類あり、専門的な技術や知識を持つ人材を対象とする「技術・人文知識・国際業務」や、企業の経営者向けの「経営・管理」などがこれに含まれます。
これらの資格では、許可された業務内容以外の活動で報酬を得ることはできません。
就労が認められない在留資格
原則として、就労が認められていない在留資格です。
「留学」「研修」「文化活動」「短期滞在」「家族滞在」の5つが該当します。
ただし、資格外活動許可を取得すれば、週28時間以内などの一定の制限のもとでアルバイトなどをすることが可能です。
就労制限のない在留資格
活動内容に制限がなく、原則としてどのような職業にも就くことができる在留資格です。
これらは身分や地位に基づく在留資格と呼ばれ、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4種類があります。
在留資格一覧
2025年現在、在留資格は全部で29種類あります。以下にその一覧をまとめました。
| カテゴリー | 在留資格 | 主な活動内容 |
| 就労可能な在留資格 | 外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習 | それぞれの専門分野に応じた就労活動 |
| 就労が認められない在留資格 | 文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在 | 学術・芸術活動、観光、勉学、技能習得、扶養を受ける活動など |
| 就労制限のない在留資格 | 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 | 身分に基づく滞在 |
| 特定の活動 | 個別の具体的な活動 | 法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動(ワーキングホリデーなど) |
出典: 出入国在留管理庁
在留資格の申請方法
在留資格を取得・変更・更新するための手続きは、状況によって異なります。
国外から外国人を呼び寄せる場合
海外にいる外国人を日本に呼び寄せて雇用する場合などは、在留資格認定証明書の交付申請を日本の出入国在留管理局に行います。
- 申請:日本にいる受入れ機関(企業など)の職員や行政書士などが代理で、入管に在留資格認定証明書の交付申請をします。
- 審査・交付:審査には通常1~3ヶ月程度かかります。許可されると在留資格認定証明書が交付されます。
- ビザ(査証)申請:交付された証明書を海外にいる本人に送り、本人が現地の日本大使館・領事館でビザを申請します。
- 来日・上陸審査:ビザが発給されたら、証明書の交付から3ヶ月以内に来日し、空港で上陸審査を受けます。審査官にパスポート、ビザ、在留資格認定証明書を提示し、問題がなければ上陸が許可され、在留カードが交付されます。
国内にいる外国人が別の資格に切り替える場合
日本に滞在中の外国人が、現在の活動目的とは異なる活動を行いたい場合(例:留学生が卒業後に日本で就職する)は、在留資格変更許可申請が必要です。
原則として、本人の住居地を管轄する入管に申請します。変更の事由が生じたら速やかに申請しましょう。現在の在留期間が満了する前に申請を完了する必要があります。
審査には1〜2ヶ月程度かかります。許可が下りる前に新しい在留資格での活動を始めることはできません。
在留期限を更新したい場合
現在の在留資格のまま、在留期間を超えて引き続き日本に滞在したい場合は、在留期間更新許可申請を行います。
在留期間が6ヶ月以上ある場合、期間満了の約3ヶ月前から申請が可能です。
更新を忘れて在留期間を1日でも過ぎてしまうと不法滞在となるため、忘れずに手続きをしましょう。
もし審査中に在留期間が満了しても、最大2ヶ月間の特例期間が設けられているため、不法滞在とはなりません。
そのほか
日本で生まれた外国人の子どもや、日本国籍を離脱した人などが、引き続き日本に滞在するためには、在留資格取得許可申請を行います。
在留資格申請の事例
【ケース】日本の大学を卒業した留学生を、IT企業がエンジニアとして採用する場合
- 在留資格の変更:留学生は留学の在留資格を持っています。日本の会社に就職し、エンジニアとして働くためには技術・人文知識・国際業務の資格へ変更が必要です。
- 必要書類の準備:企業側は雇用契約書や会社の登記事項証明書などを用意します。学生側は、申請書、パスポート、在留カード、大学の卒業証明書などを用意します。必要書類は案件ごとに異なります。必ず入管のHPを確認してください。
- 申請する:学生の住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に在留資格変更許可申請を行います。企業の担当者や行政書士が申請取次者として代行することも可能です。
- 審査・許可:審査の結果、大学での専攻内容と職務内容の関連性などが認められれば、技術・人文知識・国際業務への変更が許可され、新しい在留カードが交付されます。
留学生を採用する場合、入社日までに在留資格変更の許可が出るよう、逆算してスケジュールを組む必要があります。
許可が出る前に就職させることはできないため注意しましょう。
まとめ
在留資格は、外国人が日本で適法に滞在し、活動するための基盤となる重要な許可です。
ビザが入国のための推薦状であるのに対し、在留資格は日本での滞在そのものを許可するものであるという違いがあります。
在留資格には就労が可能なものから、原則認められていないもの、活動に制限がないものまで様々な種類があり、それぞれの目的に合った資格を取得しなければなりません。
国外からの呼び寄せ、国内での資格変更、在留期間の更新など、状況に応じた適切な申請手続きが必要です。
手続きは複雑で、必要書類も多岐にわたるため、不明な点があれば、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。