「とにかく申請してみれば通るかもしれない」 そんな気持ちになる方も少なくありません。
ですが、在留資格申請は“確率より戦略”が大切です。 今回は、実際にご相談を受けた中で申請を見送る判断をしたケースをご紹介します。
ご相談の背景
ある企業の社長様から、先月帰国してしまったCさんをもう一度雇用したいとご相談がありました。
Cさんは1年間、ご相談のあった企業で建設作業員として勤務。1年経ったときに在留資格の更新申請をしたところ、不許可となり帰国せざるを得なかったとのこと。もう一度呼び寄せることはできるか?というご相談でした。
ヒアリングの中で見えてきた課題
- 更新申請を依頼した専門家が事情をよくわかっていなかった
- そもそも不法就労だった可能性
- 雇用主である相談者もビザの事情をよくわかっていなかった
相談者の話では、1年前のある日、突然ある技能実習の監理団体から連絡があり「技能実習生の受け入れ先がとん挫して困っている。受け入れてくれないか?」と相談されたとのこと。相談者は人情に厚く、困っているなら受け入れようと承諾します。
しかし在留資格や技能実習に関する知識がなく、技能実習生として受け入れていると思い込んでいた様子。建設現場の作業にも従事させていました。
ところがよく話を聞いてみると技能実習生ではなく、実際はエンジニアとして技人国の資格を持っていたようです。更新申請の手続きはCさんが知り合いのベトナム人弁護士に個人的に依頼したとのことですが、「この1年間、エンジニアの資格で現場仕事をしてきました」という内容で申請したようです。
当然、エンジニアの資格で現場仕事はできません。入管は不許可の判断を下しました。
入管は本人になぜ不許可なのか説明をしていたようですが、Cさん本人、雇用主である相談者、更新手続きをしたベトナム人弁護士の全員が在留資格の理解がなく、なぜダメだったのかを理解できていませんでした。
当事務所の判断と対応
弊所としては、まず在留資格の資格該当性について説明し、資格において認められた業務の範囲でしか従事できない制度であることをお伝えしました。そしてなぜ不許可になったのかを説明し、納得していただきました。
そのうえで、Cさんの経歴をみると確かにエンジニアの専門であったため、今度こそエンジニアとして施工管理や設計業務に従事してもらえるなら望みはあると説明しました。
しかし日本語があまり得意ではなかったことや、管理業務のポジションに空きがないことなどから、エンジニアは難しいと判断。
本人もどうしても現場仕事がしたいとのことだったため、あらためて技能実習生として入国する、もしくは試験を受けて特定技能で入国する方法があるとお伝えしました。
その結果、将来的に状況が整えば、技能実習・特定技能を検討したいという本人の意向だったため、今は準備期間として申請を見送る判断をしました。
このケースから学べること
今回のケースでは、すでに終わっているとはいえ不法就労にあたる状況でした。
在留資格は複雑な制度であるため、内容をよく理解していないと不法就労となったり、企業側が知らない間に不法就労させている場合もあります。
不法就労は「知らなかった」は通用しません。発覚した場合、本人も雇い入れ企業もどちらも重いペナルティが科されることになります。
不安やわからないことがある場合は、専門家に相談することが重要です。